検察庁法改正案は世論の批判を受けて、今国会では、審議が見送られたようです。安倍総理も当てが外れたというところでしょう。
安倍政権の支持率が33%(朝日新聞の世論調査)に落ちたのも、この法案を強行突破しようとした結果という見方が多いようです。
今までゴリ押しで法案を通して来た安倍総理からすれば、世論がこれほど反対の声を出すのは意外だったでしょうね。
国民は自粛・自粛で政治にも鋭い目が行く人が増えていたのも世論の高まりになったのでしょう。
ちょっと、意外だったのは多くの芸能人や文化人等がこの検察庁法改正に反対したことです。
タレントのラサール石井さんや松尾松尾貴史さんのような常連だけでなく、アーティストのきゃりーぱみゅぱみゅさんや水野良樹さん(いきものがかり)、俳優の小泉今日子さん、浅野忠信さん、井浦新さん、秋元才加さん、演出家の宮本亜門さん、元格闘家の高田延彦さんのほか、多くの作家や漫画家がSNSで反対の声を上げています。モデルで俳優の水原希子さんは署名活動にも参加されているようです。
高田延彦さんなどはかなりのご立腹のようです。
きゃりーぱみゅぱみゅさんは、とある人から「検察官の定年が延びたからといってすぐに政治家が検察官に直接の影響力を与えられる訳でもない。事情を知らないのに、他人受け売りで軽率に反対するのはいかがなものか」と批判されて怒っておられましたね(その後、声明は削除されましたが、それはファンがいがみ合う結果になったからだと説明されています)。
ちょっと脱線しますが、日本では芸能人が政治的な発言をすると叩かれる風潮のようで、これはアメリカ等の先進諸国とはかなり違いがありますね。
アメリカでは、大統領選などでは、歌手や役者が堂々と支持する候補者を発表し、その候補者の支援会に出席して、歌を歌ったり、スピーチしたりして会を盛り上げています。
日本の場合は芸能人は伝統的に格下と評価されて来ているようで、政治的な発言しただけで、干されたり、敬遠されたりして来たようです。
おかしな風習ですね。
さて本題に戻って、イギリスの19世紀の歴史家ジョン・アクトンは「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」と言いました。政治学の世界では、この言葉はバイブルのように、当然のように肯定されて来ました。
いかによい人間でも権力者の地位にいると、周りからチヤホヤされ、忖度されていつのまにか「裸の王様」になってしまう・・・。
「三権分立」は権力が一点に集中しないよう、なるべく権力を分散させようという考えの下生まれた近代の自由主義概念ですが、三権のうちでも一番警戒すべきは「行政」権を把握する者であることは否めません。
安倍総理は2012年12月から2020年の今に至るまで総理大臣の座にあります。これまでがあまりに短命な内閣が続いただけに、あまりの長期政権になっていると言えるでしょう。
そして、いまや官僚人事は官邸が決めるようなシステムが構築されて来てから、官僚は人事権を持つ、総理大臣を忖度するようになって来ています。
検察官は裁判官とどうよう「公平な刑事訴訟」を担うべき人たちであり、権力者が自分に有利な扱いをしてくれる検察官を任命し、特に検察官のトップである検察総長がのさばっていれば、本来公平であるべき刑事的処遇が揺らいでしまう・・・。
やはり権力者の座に一人の者が連々と居座ることは国民にとっては決してありがたいことではないということは、歴史が物語っていると言えるでしょう。
アメリカは大統領でさえ、2期8年しかできないことが決まっています。
安倍さんは総理大臣になって今年の12月で丸8年。
国民の多くがその腹の内も分かるようになって来ており、そろそろ潮時のように思います。